ヌード撮影会は、モデルがスタジオ主催者に登録して、参加者がお金を払ってモデルを撮影できるシステムで、ヌードモデルやアダルト女優の撮影を企画するサービスがあるようです。最近、風俗営業店の業態の一つとして広まっているようですが、当方も相談を受けてはじめて知りましたので、比較的新しいジャンルのサービスだと思われます。
たてまえ上、性的接触のある風俗店とは違うので、気軽な気持ちで登録する女性はけっこういるようです。
退店時のトラブル〜親にバイトをバラすなとと言われて辞めさせてもらえない
さて、いわゆる夜の店やその他の風俗営業店では、親に内緒でバイトをする女性が多いので、辞めるときに親にバラすなどと脅されて辞められないというケースは以前からありましたが、このヌード撮影会というジャンルでも同じようなことがおきています。
それでは、実際の相談事例をふまえて、法律と対処法などについて説明していきます。
辞めるなら罰金を払えと言われた
まずは契約書を確認しましょう。契約書を見ない人が多いのですが、契約書を確認しないと、対策の立てようがありません。
もし「契約期間」についての項目、たとえば「契約期間は、令和○年1月から12月までとする。」といったようなものがあれば、契約期間内に辞めると違約金が発生する場合があります。
あなたの登録したスタジオは、もしかしたら契約に違反した場合は、違約金50万円を払うなどと書かれているかもしれません。
しかし、これについては、それほど心配はする必要はないと考えます。
一般的に、タレント事務所のようなところは契約期間が決められていることが多いですが、風俗店のアルバイトでそのような契約書はほとんど聞いたことがありません。
ヌードモデルの撮影会に登録したといっても、タレント事務所のように大金をかけて宣伝するわけでもなく、また、気軽にバイトをしたいと思って応募する人が多い風俗の求人に、そういった縛りがあると人が集まらないといった事情があるためでしょう。
しかし、なかにはブラック店で人がすぐ辞めてしまうような店では、そういった契約書を作っているところもあります。
では、契約書にそうした違約金の文があったら、絶対に払わないといけないのでしょうか!?
いわゆる風俗営業店には、風俗営業許可の縛りがある
違約金といっても、なんでもかんでも認められるわけではありません。なかには金額が不当であったり、そもそも運営側に問題があったりすることもあります。
ヌード撮影会は、基本的にモデルを撮影する会というだけであれば、役所になにか届け出をしないといけないということはありませんが、ヌードモデルの撮影会ということになると、警察署(公安委員会)へ風俗営業許可を申請して許可を得た上で営業をしなければいけません。
地方によって多少ばらつきがありますが、例えば東京都の場合は風俗営業適正化法(俗にいう風俗営業法)では、こうなっています。
「もっぱら性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行その他の善良の風俗又は少年の健全な育成に与える影響が著しい興行の用に供する興行場〜」(第2条6項3号)
したがって、ヌード撮影会のスタジオ経営者は、風俗営業許可をとらなければいけません。許可を取らないで営業したら法律で処罰されます。
前置きが長くなってしまいました・・・・・・
さて、そうすると何が変わるかと言いますと、許可を受けた店は警察署(公安委員会)の監督下となり、風営法に違反すると、営業停止されたり、処罰を受けたりするわけです。
風俗営業法の中には、昔でいう「足抜け料」を禁止しています。
簡単にいうと、月20万円くらいしか稼いでないのに、3ヶ月以内に辞めたら100万円罰金といったようなことを店がやっていると風俗営業法違反になります。
もちろん、無断欠勤に対して、1万円を徴収するいったようなことが問題になることはありませんが、報酬に比べて、あまりに不釣り合いな高額なペナルティは、それは『足抜け料』だと判断され、運営側は、法律違反の罰則を受けるおそれがあります。
つまりは、罰金(正しくは違約金や損害賠償)の金額が妥当性かどうかはともかくとして、少なくとも、高すぎる罰金をいってモデルを辞めさせないようにするのは、重大な法律違反となるということです。
辞めるならバイトを親にバラすと脅された!?
短時間でお金が稼げるということで登録する女性も多いですが、ヌード撮影ということで、たいていの人は親には内緒ですね。
そういう事情につけこんで、悪質なスタジオの経営者は、登録した女性を脅して辞めさせないようにするケースがあります。
人が少なかったり、その子が売れっ子だったり、そもそもやオーナーがブラックなキャラクターだったりと、いろんなケースがありますが、風俗営業店では、よくあるお話です。
一般に、辞める辞めないのはなしでは、警察が動いてくれるということはありません。よほどひどいことをやっているスタジオは別として、たいていは民事だから話し合ってねと言われます。
しかし、労働基準法では、労働者を脅して強制的に働かせると3年以下または300万円以下の罰金という、非常に重い罰則があります。なので、悪質な経営者は、検挙される場合がないわけではありません。
さて、モデルの場合、登録制とうたってますが、運営が用意している契約書は「委託契約」でモデルが個人事業者扱いになっている場合があります。
このため労働者ではないので労働基準法は関係ないと言ってくる可能性があります。この場合どうなるでしょうか。
辞めるなら親にバラすなどという店は、たいていアルバイトする側にほとんど自由がなく、店長やオーナーと明確な主従関係があります。契約書では「委託」、募集広告では「自由出勤」などとうたっていても、中身は、ぜんぜん違うというやつです。
その場合、契約書の表面が「委託」となっていても、実際の中身が、労働者扱いであれば、労働基準法の規定の適用を受けることになります。
何度も辞めたいと申し出ているのに、オーナーからしつこくラインやメールが来て怖い
労働契約であれ委託であれ、辞めるときは、仕事の引き継ぎや調整などがあるわけですから、できるだけ円満に辞めるにこしたことはありません。
オーナーの方も、突然、たとえば、「彼氏ができたので今日で辞めます!」といったような言われ方をしたら、当然、怒るでしょうから、最低限の常識的な段取りは必要です。
もしスケジュールに穴をあけて、その日の分、損害賠償しろ!!と言われたとしら、ある程度は責任が生じます。これは上記の風俗営業違反や労働基準法違反の問題とはまったく別の次元のお話ですから、注意して下さい。
しかし、たとえば、スケジュールの予定をちゃんと考慮して、〇〇までで辞めさせて下さいなどと伝えたのに、「前回ノルマを達成できなかったから新しいシフトを入れないと罰金だ!」とか、「辞めたら親にバラす!」などと脅す場合は、あなたの責任ではありません。
それは『言いがかり』というものです。
また、仮に契約期間や撮影会のスケジュールが残っていたとしても、オーナーからセクハラを受けたり、約束した報酬より低い報酬だったりするような場合は、これも相手に責任がありますから、予定をはやめて辞めることは問題ありません。
ただ、この場合の注意点として、できれば、運営側に違反や違法行為がある証拠を保存しておくことを強くおすすめします。
ラインなら消される前にスクリーンショットを保存しておきましょう。
内容証明郵便で、退店届け(通知書)を出す。
警察に相談に行っても、なにかされたらそのときに来て下さいなどと言われ、とりあってもらえないという方は、とても多くいらっしゃいます。現実に暴力をふるわれた、脅されてお金をとられたなどの特殊な事情がなければ、警察はふつうは対応してくれません。
では、どうするか。そのような場合には、内容証明郵便という種類の郵便で、退店届けを出すことをご提案します。
内容証明郵便は、郵便局の証明印が押され、謄本が保管されますので、なにかあったとき、いつどのような文書を出したかを証明できます。そのため相手はいいかげんなことをできなくなります。
内容証明は郵便の一種ですから、基本的には誰でも出すことは可能ですが、初めてやる場合はとても面倒で、内容もある程度の法律知識が必要です。
出してしまったら、そのあとは訂正はできません。
なので、ミスを防ぐためにも、内容証明を出す場合は士業の事務所に依頼する方が無難です。
ちなみに当方は行政書士ですが、行政書士は事実証明に関する書類作成ができます。
(内容証明郵便は事実証明書類の一つです。)
また、行政書士は、風俗営業許可手続きのからみで警察と業務上、関わりがありますので、
行政書士の事務所から風俗営業法の条文を盛り込んだ退店届け(通知書)を出すことで抑止効果が高まります。
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