個室での盗撮〜16県が迷惑防止条例の対象外

 デリヘルを呼んでホテルで盗撮すると、軽犯罪法や迷惑防止条例に抵触する。軽犯罪法は科料1万円未満に対して、迷惑防止条例は1年以下の懲役や100万円以下の罰金などとなっており、刑の重さがまるで違う。どちらが適用されるかは、大きな問題だ。

 従来、捜査当局では、「不特定多数の出入りする場所」でないと迷惑防止条例の要件にある「公共の場所」に当たらないという取り扱いで、たとえば公衆トイレのような密室は、条例の「公共の場所」に該当せず、従来、迷惑防止条例ではなく軽犯罪法が適用されていた。

 

 しかし、いくつかの都道府県では、条例が改正され、「不特定多数の出入りする場所」でない公衆トイレのような密室も、迷惑防止条例が適用できるようになった。結果として、条例が改正された自治体は、デリヘル利用時にホテル室内で盗撮すると、迷惑防止条例の適用が可能ということになる。

 毎日新聞2016年1月30日付けの記事によれば、調査の結果、16県の迷惑防止条例が上記のような改正がされていないということだ。逆にいえば、30都道府県では改正されたということである。最近、福岡県でも改正があり、2015年に初めて、商業施設の公衆トイレで隠し撮りをした男性を、迷惑防止条例違反で検挙したということだ。今後、この改正の動きは広がっていくことが予想される。

 ただ、デリヘルのような風俗店での盗撮トラブルを、警察が事件として受けるかといえば、実際そういう事例はほとんど聞かない。デリヘル利用で盗撮が発覚すると、すぐ男性店員が来て、その場で示談になることが多いという理由もあるだろう。(身分証をコピーされ、念書を書かされる!)また、デリヘル利用での盗撮は駅など公衆トイレの盗撮とは社会的影響度が違うし、そもそも性的サービルを前提としており、さらに風俗店が主導する示談は恐喝まがいになりがちという理由もあるだろう。数は多くないが、風俗店が客に示談金を恐喝したとして検挙された例もある。こういった事情もあって、基本的には警察はデリヘルの盗撮に少なくとも積極的ではない。

 ちなみに、東京都の迷惑防止条例は、不特定多数が出入りしない公衆の場所での盗撮に適用できるよう、すでに改正がなされている。



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